糖尿病検査は早期発見と合併症予防に不可欠です。空腹時血糖、HbA1c、75gOGTTなどの基本的な糖尿病検査に加え、網膜症・腎症・神経障害の合併症検査も重要です。本記事では、診断から経過観察までの検査内容を詳細に解説します。
糖尿病の診断に用いる検査とは
診断に必須の検査項目とその基準値
糖尿病の診断には以下の4項目のいずれかと、HbA1c 6.5%以上の組み合わせが求められます。
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空腹時血糖値(FPG):126 mg/dL以上
朝食前の絶食時に測定される血糖値で、糖代謝の基本的な指標です。 -
75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値:200 mg/dL以上
糖を摂取後2時間後の血糖値で、耐糖能異常を見抜くために有効です。 -
随時血糖値:200 mg/dL以上
時間帯に関係なく測定される血糖値です。臨床現場での初期スクリーニングに使われることがあります。 -
HbA1c(ヘモグロビンA1c):6.5%以上
過去1〜2か月間の平均的な血糖値を反映する指標です。
上記のうち、①〜③のいずれかと④(HbA1c)の組み合わせで糖尿病と診断されます。ただし、HbA1c単独では診断できないため、再検査を行って確定します。
初診時に行う糖尿病の検査内容
血液検査・尿検査・身体所見の全体像
初診時の検査は、糖尿病の診断だけでなく、合併症や併存疾患の早期発見も目的としています。
【血液検査】
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血糖・HbA1c:糖尿病の基本的な診断指標
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脂質プロファイル(LDL、HDL、中性脂肪):動脈硬化リスク評価
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腎機能(BUN、eGFR):糖尿病性腎症リスクの評価
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電解質(Na, K, Cl):腎障害や薬物療法時の安全性評価
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肝機能(ALT, γ-GTP)
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血算:貧血や感染の指標
【尿検査】
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尿糖・尿蛋白・尿ケトン体:代謝状態・腎障害の指標
【身体所見】
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BMIや血圧:肥満や高血圧の有無
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頸動脈雑音・足背動脈拍動:動脈硬化のスクリーニング
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足の皮膚観察:糖尿病性足病変の早期発見
糖尿病合併症を見逃さないための精密検査
網膜症・腎症・神経障害のチェック
糖尿病の三大合併症は、網膜症・腎症・神経障害です。これらは無症状で進行するため、定期的な検査が不可欠です。
網膜症(糖尿病網膜症)
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眼底検査を年1回以上実施
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網膜出血や浮腫を早期発見し、失明リスクを軽減します
腎症(糖尿病性腎症)
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尿中アルブミン・クレアチニン比(ACR)の測定が推奨されます。
30〜299 mg/gは微量アルブミン尿とされ、早期腎症の指標です。 -
腎機能が低下している場合は、eGFRの定期的測定が重要です。
神経障害(糖尿病神経障害)
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圧触覚・痛覚・振動覚の異常が検出されることがあります
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進行すると足潰瘍や切断リスクにつながるため、足の診察も行います
再診時の糖尿病検査:継続的な管理と評価
経過観察の検査頻度とタイミング
糖尿病は慢性疾患であり、継続的な評価が求められます。
毎回の再診時
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体重(BMI)・血圧・血糖・HbA1c
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生活習慣の聞き取り(食事・運動・喫煙・飲酒)
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内服薬の効果と副作用チェック
2〜3ヶ月に1回(安定期)
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脂質:LDL, HDL, 中性脂肪
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腎機能:eGFR、尿蛋白クレアチニン比
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肝機能・電解質
年1回以上
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眼底検査
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足診察と神経所見
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安静時心電図(虚血性心疾患リスクの評価)
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口腔内診察(歯周病との関連)
見逃しを防ぐ特殊な検査と再検査
一度の検査で判断できない場合の対応
HbA1cのみが基準値を超えていた場合、**再検査(1か月以内)**が必要です。その際には血糖値測定も必須となります。
また、次のようなケースでは再検査を行います:
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明らかな症状はあるが、血糖値が正常域
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HbA1cと血糖値が乖離する場合(例:腎不全・貧血など)
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急性疾患、ストレス、高熱後の一過性高血糖が疑われるとき
おわりに:糖尿病検査は健康寿命を守る第一歩
糖尿病は、適切なタイミングで検査を行い、早期に発見し、合併症を防ぐことが何よりも重要です。定期的な検査と生活習慣の見直しが、将来的な健康リスクを大きく下げる鍵となります。
引用文献:
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Noto H, et al. Study for the Efficacy Assessment of the Standard Diabetes Manual. J Diabetes Investig 2016; 7: 539–543.
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Tricco AC, et al. Effectiveness of quality improvement strategies on the management of diabetes. Lancet 2012; 379: 2252–2261.