糖尿病で使用される内服薬
糖尿病治療薬は病態や治療目標によって使い分けます。 2型糖尿病の治療で使われる薬の種類と特徴を以下に紹介します。 1型糖尿病は基本的にインスリン治療が必要です。ビグアナイド薬(例:メトホルミン)
作用機序:肝臓での糖新生(糖の産生)を抑制し、末梢組織でのインスリン感受性を高める。
特徴:体重増加が少なく、低血糖のリスクも低い。心血管保護効果が報告されている。飲酒量が多い場合は注意が必要。
副作用:副作用:消化器症状(下痢、悪心など)、乳酸アシドーシス
薬剤の一般名はメトホルミンで、下記の商品名の薬剤が有ります。
- グリコラン錠®
- メトグルコ錠®
- メトホルミン塩酸塩錠(メトホルミン塩酸塩錠250mgMT「〇〇」、「メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「〇〇」」という名称で販売
「〇〇」の部分には各ジェネリックメーカーの名前が入ります。) - ジベトス錠®
- ブホルミン塩酸塩腸溶錠50mg「KO」
DPP-4阻害薬(例:シタグリプチン、リナグリプチン)
作用機序:GLP-1などのインクレチン(消化管ホルモンの一種)分解を抑えて、食後のインスリン分泌を促進。
特徴:低血糖リスクが少なく、体重への影響も少ない。高齢者でも使いやすい。
1日1~2回内服するものと、週1回内服するものがある。
副作用:まれに関節痛や膵炎、水疱性類天疱瘡など。
一般名 | 商品名 | 用法 |
---|---|---|
シタグリプチン | ジャヌビア グラクティブ |
1日1回 |
ビルダグリプチン | エクア | 1日2回 |
アログリプチン | ネシーナ | 1日1回 |
リナグリプチン | トラゼンタ | 1日1回 |
テネリグリプチン | テネリア | 1日1回 |
サキサグリプチン | オングリザ | 1日1回 |
アナグリプチン | スイニー | 1日2回 |
トレラグリプチン | ザファテック | 週1回 |
オマリグリプチン | マリゼブ | 週1回 |
SGLT2阻害薬(例:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン)
作用機序:腎臓の近位尿細管でブドウ糖再吸収を阻害し、尿中に糖を排出させる。
特徴:体重減少、血圧低下、心臓や腎臓を保護する作用がある。
副作用:脱水や尿路感染、ケトアシドーシス
一般名 | 商品名 |
---|---|
イプラグリフロジン | スーグラ |
ダパグリフロジン | フォシーガ |
ルセオグリフロジン | ルセフィ |
トホグリフロジン | デベルザ |
カナグリフロジン | カナグル |
エンパグリフロジン | ジャディアンス |
スルホニル尿素(SU)薬(例:グリメピリド、グリクラジド)
作用機序:膵臓のβ細胞に働きかけ、インスリン分泌を促す。
特徴:効果が強いが、体重増加傾向しやすい。
使用量によっては低血糖になるリスクもある。
積極的には使用されなくなっている薬剤。
副作用:低血糖
薬剤の種類:
- アセトヘキサミド
- グリクロピラミド
- クロルプロパミド
- グリベンクラミド(オイグルコン®、ダオニール®)
- グリクラジド(グリミクロン®)
- グリメピリド(アマリール®)
グリニド薬
作用機序:SU薬と同じインスリン分泌促進効果で血糖を低下させる。
特徴:SU薬に比して速やかに吸収され血中半減期もかなり短いため,速効型インスリン分泌促進薬、食後高血糖改善薬として用いられます。
副作用:低血糖
薬剤名:
- ナテグリニド(ファステック🄬、スターシス🄬)
- ミチグリニド(グルファスト🄬)
- レパグリニド(シュアポスト🄬)
チアゾリジン薬(例:ピオグリタゾン)
作用機序:特に脂肪細胞内にあるPPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)という受容体を活性化し、インスリンの効きを良くする。
特徴:インスリン感受性を改善するが、体重増加や浮腫が出ることがある。
心不全がある場合は禁忌。
膀胱癌治療中の場合も投与は避ける。
脂肪肝への治療にも使用される場合がある(保険適応外)。
副作用:浮腫、女性では骨折頻度の上昇。心不全悪化にも注意。
薬剤名:ピオグリタゾン(アクトス🄬)
α-グルコシダーゼ阻害薬(例:アカルボース、ボグリボース)
作用機序:小腸での糖分解酵素を阻害し、糖の吸収を遅らせる。
特徴:食後高血糖を抑制する。食事の直前に服用する必要がある。
開腹手術や腸閉塞の既往のある場合は注意。
副作用:お腹の張り、ガスがたまりやすく、下痢、排便回数の増加、便秘などの消化管症状がでることがある。
薬剤名:
- アカルボース(グルコバイ®)
- ボグリボース(ベイスン®)
- ミグリトール(セイブル®)
GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド)
作用機序:体内のGLP-1受容体に作用する。インスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌を抑制する。
特徴:血糖降下作用に加え、食欲抑制効果・体重減少効果がある。
心血管イベントの抑制効果も確認されている。
セマグルチドの注射薬もあり。
副作用:消化器症状(悪心、下痢、便秘、嘔吐など)、食欲減退
薬剤名:セマグルチド(リベルサス🄬)
2型糖尿病の配合剤
糖尿病の配合剤(内服薬)は、異なる作用機序をもつ薬剤を1錠にまとめた治療薬で、主に2型糖尿病の治療に用いられます。
たとえば、インスリン分泌促進薬とインスリン抵抗性改善薬の組み合わせや、SGLT2阻害薬(尿中に糖を排出する薬)とDPP-4阻害薬(インスリン分泌を促す薬)などがあり、血糖コントロールを多角的に強化できます。
1日服用回数や錠数が減ることで、患者の服薬アドヒアランス(服薬遵守)が向上し、継続的な治療がしやすくなります。
また副作用のリスクを抑えつつ、効果的な治療を実現できるのも利点です。近年では、さまざまな配合比率の製剤が登場し、個々の患者に最適な選択が可能になっています。
含まれる成分の量によって規格が二つある薬剤があります。
商品名 | 成分A:一般名と商品名 | 成分B:一般名と商品名 |
メタクト配合錠 | ピオグリタゾン(アクトス) | メトホルミン塩酸(メトグルコ) |
ソニアス配合錠 | ピオグリタゾン(アクトス) | グリメピリド(アマリール) |
リオベル配合錠 | ピオグリタゾン(アクトス) | アログリプチン(ネシーナ) |
グルベス配合錠 | ミチグリニドカルシウム水和物 (グルファスト) |
ボグリボース(ベイスン) |
エクメット配合錠 | ビルダグリプチン(エクア) | メトホルミン塩酸塩(メトグルコ) |
イニシンク配合錠 | アログリプチン(ネシーナ) | メトホルミン塩酸塩(メトグルコ) |
カナリア配合錠 | テネリグリプチン(テネリア) | カナグリフロジン(カナグル) |
スージャヌ配合錠 | シタグリプチンリン(ジャヌビア) | イプラグリフロジン(スーグラ) |
トラディアンス配合錠 | エンパグリフロジン(ジャディアンス) | リナグリプチン(トラゼンタ) |
メトアナ配合錠 | アナグリプチン(スイニー) | メトホルミン塩酸塩(メトグルコ) |
2型糖尿病治療で使うインスリン以外の注射薬
内服薬以外にも注射薬での治療を行うことがあります。 週に1回の注射薬の登場など利便性を高めた設計がなされています。GLP-1受容体作動薬(例:リラグルチド、セマグルチド)
作用機序:体内のGLP-1受容体に作用する。インスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌を抑制する。
特徴:血糖降下作用に加え、食欲抑制効果・体重減少効果がある。
心血管イベントの抑制効果も確認されている。
セマグルチドは内服薬も使用可能。
副作用:消化器症状(悪心、下痢、便秘、嘔吐など)、食欲減退
薬剤の種類:
- リラグルチド(ビクトーザ🄬)
- エキセナチド(バイエッタ🄬)
- リキシセナチド(リキスミア🄬)
- セマグルチド(オゼンピック🄬)
- デュラグルチド(トルリシティ🄬)
GIP/GLP-1受容体作動薬
作用機序:GIP受容体とGLP-1受容体に作用する。高血糖時にインスリンの分泌を促し、グルカゴンの分泌を抑制する。
特徴:より強力な体重減少効果と血糖効果作用、食欲抑制効果を発揮する。
心血管イベントの抑制効果も示唆されている。週1回の注射薬。
副作用:消化器症状(悪心、下痢、便秘、嘔吐など)、食欲減退
薬剤の種類:チルゼパチド(マンジャロ🄬)